株式会社キノックス

きのこの豆知識・その4

美味しいきのこ ポルチーニ

ポルチーニと言えばトリュフ、マツタケと並ぶ世界三大きのこのひとつであり、ヨーロッパのどの国でも最も好まれる、まさに「大様きのこ」です。世界中に広く分布し、もちろん日本にも自生します。「ポルチーニ」という言葉は、イタリア語で「豚のような奴」という意味(単数形はポルチーノ)で、きのこ全体が丸々と膨らんでおり、まるで子豚のような愛嬌のある姿に因んで命名されたものです。和名のヤマドリタケは、山鳥の羽色と太った体型に擬えたものです。日本ではアンズタケ同様にほとんど利用されることはありませんが、香りと味のバランスの取れた、しかも肉質がしっかりとしていることから、ヨーロッパでは好んで食されています。ドイツ語ではシュタインピルツ(石のように固いきのこ)、フランス語ではセップ、ポーランド語ではボロヴィックなどと呼ばれ広く親しまれています。同属近縁種のきのこにヤマドリタケモドキ(傘表面の光沢と柄の網目模様で区別)がありますが、ヨーロッパでは両種を区別することなく同等の価値で流通しており、同種だとする説もあるくらいです。
 ポルチーニ(ヤマドリタケ)はイグチ科、ヤマドリタケ属のきのこで、ヤマドリタケモドキと異なり傘表面(特に幼子実体)が無毛平滑で光沢があり、また、菌柄の網目模様が不鮮明かつ部分的に存在することが大きな特徴で、主にトウヒ林などの針葉樹林内に発生する外性菌根きのこです。
 日本ではこれまでナラやブナなどの広葉樹林内に発生するヤマドリタケモドキは知られていましたが、ポルチーニと呼ばれるヤマドリタケは北海道のエゾマツ林など一部地域に発生が限定されていました。しかし、近年では宅地造成などに伴い海外からの輸入樹木が植林されるようになったことで、菌糸が樹木と一緒に持ち込まれたためか、ヤマドリタケと思われる種類が見受けられるようになってきています。他のきのこ類のように奥深い山中よりは公園や道路に近い林内など結構身近な環境に発生するのですが、きのこシーズンとは無関係な真夏に発生し、ほとんど食用に供されることのなかった無名のきのこで、しかも、これまで日本では食習慣がないことから、残念ながら今のところ誰もが採って食べようとするきのこではありません。イタリア人が聞いたら、まさに羨ましがるような話です。ヨーロッパではトリュフ同様スパゲッティーに生でスライスする調理法が一般的なようですが、日本人には醤油味のバターソティーが合うように思われます。「イタリアのマツタケ」とも称される高級食材で、あたかも日本におけるマツタケのような人気きのこと言えます。もっとも「マツタケフリーク(マツタケ気狂い)」は日本人だけで、ヨーロッパの人達にとっては香りの感覚が異なることから、決して美味しいとは感じないようですが・・・。 乾燥することで特有の芳ばしい香りがいっそう強くなることから、この世界的に有名なきのこが香りを身上とするマツタケ同様、日本でも人気が高まることを期待したいものです。なお、これまで日本のイグチ類には毒きのこはないと言われてきましたが、コメツガなどの標高の高い針葉樹林に発生するヤマドリタケモドキに類似したきのこの「ドクヤマドリ」は、その名の通り胃腸系の中毒を引き起こす有毒きのこ(青変性の有無で区別)であることから、注意が必要です。


ヤマドリタケとヤマドリタケモドキの比較

  傘表面 柄の網目模様 発生場所
ヤマドリタケ 無毛平滑(光沢あり) 部分的で不明瞭な網目模様 針葉樹
ヤマドリタケモドキ ビロード状 全体にはっきりと目立つ網目模様 広葉樹、針葉樹



ポルチーニ
ウラジロモミの根元に発生したヤマドリタケモドキ