株式会社キノックス

はたけしめじの栽培相談コーナー

はたけしめじの栽培について、今までお問い合わせの多かった質問について解説いたしました。栽培するための参考にして下さい。

Q1. 「はたけしめじ」とはどのようなきのこですか、また、調理法についても教えてください

A. はたけしめじ」はキシメジ科シメジ属のきのこで、傘の大きさは4~9cm、色は暗灰褐色~茶褐色で、白いカスリ状の模様を有し、秋に道端や畑など身近な環境の土中内の腐朽木などを分解して発生するきのこです。分類的には、古来より美味しいきのこの代表とされている菌根菌のホンシメジに最も近縁なきのこです。
  シャキシャキしていて歯切れが良く、ホンシメジ同様どんな料理にも利用可能で、特に柄が中空であることから調理の際に味が浸み込み易く、食感、味ともに大変美味なきのこであるため、三重、宮城、秋田、群馬の各県の林業試験場などで人工栽培化に向けた研究が盛んに行われています。最近の研究によれば、「はたけしめじ」には、食べても吸収可能な制ガン効果を発揮する低分子のβ-グルカンが多く含まれることが解明され、まさに「医食同源」を地で行くきのことして脚光を浴びるようになってきています。
なお、具体的な「はたけしめじ」の調理法については、弊社サイトの「きのこ料理のレシピ」のページ(https://www.kinokkusu.co.jp/etc/cook-in.html)を参考にしてください。

Q2.培養での害菌発生が多いのですが?

A.「はたけしめじ」は、他の栽培きのこに比べて接種した種菌からの発菌・活着が遅いため、培養初期における害菌混入の可能性が高くなる特性があります。そのため、栽培に当っては接種後から10日までの初期培養において、クーラーや換気扇等の荒風を菌床に直接当てないように注意する必要があります。簡易的な害菌対策としては、接種してから10日までの期間をビニルシートでパレットに積み上げた菌床全体を完全に包み込んでしまい、風を当てないように管理する方法があります。10日間程度経過することで菌床表面全体に菌糸が蔓延するようになりますので、この時点でビニールを取り除いて酸素を供給してやるようにします。ただし、シート管理の場合、取り外すタイミングが遅くなってしまうとムレ症状を引き起こす危険性がありますので、取り外しのタイミングには十分に注意してください。
また、発菌・活着を早める方法として、種菌をあまり細かく砕かずに小豆位の大き さとし、接種する量も多め(1ビン当り25cc程度)にすることで、初期培養における 害菌混入の予防に効果を発揮することが出来ます。

Q3.芽揃いが悪いのですが、原因について教えてください。

A.発生操作後の芽揃いが悪い原因については、2つの要因が考えられます。第1の原因は、培養の管理不良のために菌床の熟度が不足している場合です。きのこの人工栽培において、良好な発生のためには培養した菌糸の体内に子実体を発生させるための十分な養分を蓄える必要があります。蓄積養分が不足した場合には、発芽が不揃いとなってきのこの生育が悪くなるため、思ったような収量を確保することができません。
第2の原因は、芽出し初期の加湿不足による乾燥の影響です。「はたけしめじ」は発生操作直後の乾燥に取り分け弱いことから、生育初期における湿度管理が大変重要となります。特に発生操作後の5日間の湿度管理が重要で、この間に菌床表面を乾燥させてしまうと発芽が不揃いとなってしまいます。そのため、発芽の同調性を図るためには、生育初期における菌床表面の乾燥を防止するための湿度管理に特に注意する必要があります。

Q4.他のきのこよりも菌糸の伸長速度が遅いのですが?

A.菌糸の伸長速度の遅いのは、「はたけしめじ」の特徴です。通常のきのこは、850ccビンの場合、20~25日で菌糸蔓延が完了しますが、「はたけしめじ」の場合は、品種によっても異なりますが、35~50日を要します。菌糸伸長が緩慢なのに加え、初期の発菌・活着にも時間を要することが「はたけしめじ」の大きな特徴です。人工栽培がなかなか普及しない理由の一つには、菌糸の発菌・活着が遅いことと菌糸蔓延に時間を要するため、栽培の難しいことが要因としてあげられます。この現象は品種間での較差が大きいことから、特にビン容器で栽培する場合には、品種の選択が重要となります。弊社では、海外の品種と国産品種を交配させることにより、これら「はたけしめじ」の欠点を克服し、ビン栽培用の専用品種を開発することで、人工栽培の普及を図っているところです。

Q5.芽出しの段階で「赤水」が出るのはなぜですか?

A.「はたけしめじ」の場合、芽出し管理において「発芽水」を生じるのが一般的な症状です。通常の場合、発芽水は透明ですが、過熟培養や害菌が混入している場合などには赤く着色するようになります。「赤水」が発生した場合には、良好な発生は期待できませんので、原因をしっかりと調査する必要があります。
過熟培養の場合には、適正日数で発生操作を行うように心掛けます。培養適正日数の判断は、菌糸蔓延が完了後、10日間程度の熟成管理を行いますが、この間に菌床側面に形成された菌糸被膜部が部分的に「肌色」様に着色するようになる頃を目安とします。
また、害菌が混入している場合には、侵入原因を解明し、対策を講じる必要があります。最も一般的な原因は、培養初期における害菌混入です。「はたけしめじ」は他のきのこに比べて初期の発菌・活着が遅いことから、接種後の10日間は荒風等で害菌が混入しないよう、ビニルシートなどで全体を囲い込んで風対策を講じるようにしてください。

Q6.芽が剥離してしまうのはなぜですか?

A.芽出し管理における原基形成時に、一旦形成された芽が下から再度形成された芽に押し上げられる形で、最初に形成された芽が剥離してしまう現象が「菌床剥離」と呼ばれる症状です。剥離してしまった芽の塊が株の中に入り込んでしまい、出荷の際に異物混入の扱いとなってしまいます。
原因についてははっきりしたことはわかっていませんが、増収目的で使用する培地物性改善(空隙を作る)を兼ねて添加するコーンコブなどの影響が考えられます。スギオガコを単独で使用した培地において、剥離症状がほとんど見られないことから、菌床表面の空隙が影響しているのかもしれません。ちょっとした空隙に大きな塊となる原基を形成してしまうという、「はたけしめじ」の特性が関係しているように思われます。対策としては、原基形成確認後に照明を点灯し、照射時間を長くして最初に形成した原基の生育を優先的に促進させることで、剥離症状が少なくなる傾向が認められています。

Q7.柄が中空となってしまうのですが?

A.「はたけしめじ」は、菌柄が中空となることが本来の形態的特性です。しかし、栽培方法や品種(菌株)によっては中空とならずに中実のものもあります。一般的には日本に自生する「はたけしめじ」は中空型で、ヨーロッパ産のものは中実であり、ホンシメジにより近縁な「種」ではないかと言われています。
また、栽培方法によっても中空の度合いが異なる傾向が認められています。生育温度が高い場合や培地に添加する栄養源の糖質割合が多い場合には、中空の度合いが大きくなる傾向にあります。一般的なきのこにおいては、柄の中空特性は欠点扱いとなりがちですが、「はたけしめじ」の場合、肉質の歯切れが良いことから、柄が中空であっても食感的に劣ることはなく、むしろ調理の際にきのこへの味の浸み込みが良くなるため、美味しさを増強させる特徴のひとつとなっているのです。

Q8.液体種菌での栽培は可能ですか?

A.「はたけしめじ」は「しいたけ」や「なめこ」と異なり、木材腐朽力はそれほど強いきのこではないことから、種菌の形状としては、これまでのきのこのようなオガコ種菌よりは、むしろ液体種菌の方が適していると言えます。栽培上の難点は、種菌接種後の発菌・活着が遅いことが大きな課題ですので、出来るだけ早期に発菌させるためには、オガコ種菌よりは液体種菌の方が良好な結果が得られます。しかし、液体種菌の場合は、無菌的に操作ができるジャーファメンターなどの高額の設備と、より高度な取り扱い技術(無菌操作技術)が必要となります。液体種菌は「はたけしめじ」にとって理想的な種菌形態と言えるのですが、多額の設備投資と高度の種菌培養技術などが必要となるため、小規模栽培では導入の難しいことが、栽培普及上の大きな課題となっています。

Q9.収量が伸びない原因について教えてください

A.きのこ栽培における収量が伸びない原因については、いろいろな要因が考えられます。その原因を一言でいえば、培養管理の段階で「健全な菌床」に仕上がっていないと言うことになります。健全な熟度に仕上がっていない菌床は、どんなに立派な生育室で管理してもきのこは思うように発生しません。子孫繁栄のための菌糸体内への養分蓄積が滞ってしまっているためです。
菌床が未熟となる要因については、オガコの樹種や粒度と栄養源の配合割合などの原材料の問題、殺菌不良、放冷時の戻り空気による吸い込み汚染、接種時や培養初期における害菌混入、さらには、培養中の高温障害や酸欠培養などがあげられます。
また、生育時の問題点としては、発生直後の菌床表面の乾燥による発生不良があげられます。原基が形成するまでの発生操作後5日間の湿度管理が特に重要で、この間に菌掻き処理後の菌床表面を乾燥させてしまうと発生が不揃いとなってしまい、収量が伸びません。「はたけしめじ」の人工栽培における注意点はいろいろありますが、安定発生のためのポイントを要約すると、①害菌との競合培養を避けて、②生理特性に叶った培養管理を行うこと、の2点に絞られると言っても過言ではありません。

Q10.気中菌糸が多く、芽が出ないのですが、原因について教えてください

A.「はたけしめじ」は、芽出し管理における菌掻き処理後の湿度管理が大変重要となりますが、加湿過多となってしまった場合には、再生気中菌糸が旺盛に繁殖してしまい、原基が形成されなくなってしまいます。それゆえ、酸欠環境となるような極端な加湿は良くありません。菌掻き処理後の菌床表面に菌糸が再生するまでの約5日間の加湿は重要なのですが、それ以上の長い加湿管理は逆効果となってしまいます。酸欠のために菌糸が脱分化を起こしてしまい、生殖生長から栄養生長へ再び戻ってしまうのです。菌糸再生のための湿度管理は菌糸の再生状況を見極めながら行うことが重要で、菌糸再生後は気中菌糸の動向に注意し、気中菌糸を発生させないように芽出し湿度を調整する必要があります。
  また、その他の原因としては、菌株の劣化(性能低下)の可能性も考えられます。きのこの菌糸は継代培養を繰り返すことにより、原基形成能力が低下(劣化)することが知られています。特に「はたけしめじ」は菌株の劣化が早いきのこですので、種菌の性能には十分な注意が必要です。長期に継代培養を繰り返した種菌は、子孫繁栄のための原基形成能力が低下している場合が多いことから、菌掻き後の気中菌糸の発生が多くなる傾向にあります。それゆえ、種菌の自家増殖は劣化のリスクが高くなりますので、信頼のおけるメーカーから定期的に種菌を購入するようにしてください。

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