株式会社キノックス

ぶなしめじの栽培相談コーナー

ぶなしめじの栽培について、今までお問い合わせの多かった質問について解説いたしました。栽培するための参考にして下さい。

Q1. ジャミ芽が出るのはなぜですか?

A. ジャミ芽症状とは、傘の大きさが販売に不適な5~10mmの規格外の小さなきのこが正常の大きさのきのこと混在して多数発生することで、商品価値が低下してしまう一種の生育障害のことです。ジャミ芽が発生する原因の1つとしては、熟度不足が考えられます。ブナシメジは、栄養源やオガコを分解して菌糸体内に養分を取り込む熟成という工程が非常に重要であり、この熟成が不足するとジャミ芽の発生や芽数の減少、さらには収量の低下という症状に繋がってきます。従って、熟度不足が起こらないように、栄養源の添加量や含水率、培養温度、培養期間などをその品種特性に合った条件下で管理する必要があります。
  また、ブナシメジはマンジュウ掻きという発生方法を行いますが、マンジュウ掻きの深さと処理時間は、芽数の多寡に深く関わってくることから、重要な処理作業となります。通常、菌掻きを実施した部分からは原基形成は認められませんが、菌掻きが浅かったり、処理時間が短いと菌掻きを行った部分からも原基が形成されるようになってしまい、芽数が多くなって最終的にジャミ芽の発生に繋がってしまいます。対策としては、菌床の熟度不足を避けて、菌掻き処理をしっかりと行うことです。

Q2.菌柄が長くなり、きのこの生長が不揃いとなってしまうのは何が原因ですか?

A.きのこの柄の長短に関わる因子としては大きく二つあります。一つは光で、光が強いと柄が短くなり、弱いと長くなる傾向があります。二つ目は、二酸化炭素濃度です。二酸化炭素濃度が高いと柄は長くなり、低いと短くなります。
 ブナシメジは、原基形成までは50Lux前後の薄暗い場所で行いますが、生育は500Lux程度の光照射を必要とします。この生育段階で光照射を行うことを「光抑制」と言い、光照射を行って柄の徒長を抑制し、きのこの生長を穏やかにすることにより芽揃いを良くします。従って、菌柄が長くなり、きのこの生長が不揃いとなってしまう原因としては、光抑制を行うタイミングが遅いということが考えられます。対策としては発芽を確認後、もう少し早い時期に光抑制を行えば、柄の徒長が抑えられ、芽揃いも良くなると思われます。一般的な光抑制のタイミングの目安は、原基先端に肉眼で確認可能な幼傘が形成された時期(品種で異なる)が適期とされています。

Q3.傘が小開きしてしまうのは何が原因ですか?

A.一般的に傘が小開きしてしまうのは、芽数が多いことが原因と言われています。芽数を左右するものとしては、培養が長くなり過ぎた場合(過熟培養)や芽出し段階における加湿過多が上げられます。それゆえ、対策としては過熟培養とならないように培養の適期で発生操作を行うことが大切です。また1)で述べたようなマンジュウ掻きの深さと処理時間によっても芽数が多くなる傾向にありますので、菌掻き作業は丁寧に行う必要があります。さらには、ブナシメジの場合、他のきのこと異なり換気過多によって酸素を過剰に供給した場合においても、小開きしてしまう傾向が認められることから、生育室の炭酸ガス濃度は2,000~3,000ppmとやや高めに設定する必要があります。
なお、ブナシメジに限ったことではありませんが、一般的に培地調整時における栄養源の配合割合や水分不足となった場合にも小開きの症状が見られるようになりますので、出来るだけ適正範囲内に培地組成を調整することが肝要です。

Q4.傘の表面に茶褐色のハンテンが出来てしまうのはなぜですか?

A.ブナシメジの傘には元々小さなハンテンがあり、これはブナシメジの形態特性の一つで大理石模様とも言われ、学名の名前の由来にもなっています。この大理石模様より大きなハンテンが形成されている場合は、外的要因で生じた可能性が高くなります。その場合は、発生操作直後に瓶口に水が溜まることを防止するために施す被覆材(有効ポリ、新聞紙、タイベックシートなど)を除去するタイミングが遅れたことにより、傘が被覆材に接触してしまい、傘上にハンテン模様が形成されてしまったとものと考えられます。特に芽出し管理での加湿が多い場合には、被覆材の内側に水滴が結露するようになって症状が悪化するようになりますので、加湿過多にならないよう注意する必要があります。対策としては、原基が被覆材に接触する前に被覆材を取り除くようにすれば、傘のハンテン症状は無くなると思われます。

Q5.吐水症状は何が原因ですか?

A.きのこの傘の表面などに水滴状の液体が停留する症状を「吐水」と呼んでおり、きのこの日持ちに悪影響を与えることが問題となる症状です。当初はバクテリアが原因と思われておりましたが、通常のバクテリアの感染では病兆が再現しないことが判明しております。最近の研究成果によれば、特殊なバクテリア(ファージに感染したバクテリア)がきのこに感染することにより、初めて病兆が発現することが確認されております。バクテリアにファージが感染する原因については、まだはっきりと解明されておりませんが、キノコバエ等の害虫が媒介しているのではないかと言われております。
  対策としては、病気の原因となるファージ感染バクテリアを増やさないようにすることです。そのためには、害虫が媒介原因となる可能性が高いことから、害虫発生の最大の原因となり易い殺菌不良等による害菌汚染菌床を極力発生させないように留意(害菌混入菌床は害虫を誘引)することと、菌床の入れ替え都度の生育室の掃除と水洗いを心がけ、害虫の餌をなくしてキノコバエなどを寄せ付けないように、常に生育室の環境を清潔に保つことが何よりも重要となります。また、生育温度が規定よりも高かったり、生育室に風の動きがないために空気が淀んだりするとバクテリアの繁殖が旺盛になってしまうことから、ファージ感染の宿主(バクテリア)を一定数以上に繁殖させないよう生育環境のコントロールにも留意することが必要です。

Q6.包装後の石突き部からの気中菌糸の発生が多いのですが?

A.包装後に袋内で気中菌糸が発生してしまうのは、子実体の水分が高いことが原因で起こる症状と考えられています。従って、収穫の2~3日前から発生室の加湿を下げて、子実体からの水分を少し抜くような管理を心掛けてから収穫することで、気中菌糸の発生を抑えることができます。
きのこは生育中に子実体から呼吸水を大量に発散しますので、室内の加湿量が多くなり過ぎた場合には、水分の新陳代謝が悪くなって石突き部分に呼吸水が停留するようになり、症状が発現し易くなりますので、収穫直前の加湿管理には注意が必要です。なお、収穫後のきのこの包装に使用する包材(ラップ)の材質によっても気中菌糸の発菌の仕方が異なりますので、フィルムの通気性を抑制したブナシメジ用に開発された専用の包材を必ず使用するようにしてください。

Q7.品種によって苦みがありますが、苦みの原因はなんですか?

A.野生株から分離したブナシメジには苦味のある品種が多いことから、品種により苦みの有無の違いがあると思われます。一般的には、栽培に使用する栄養源の種類によって苦味の程度が異なると言われており、栄養源に含まれるアミノ酸の影響とされております。これまでの研究成果によれば、苦味の成分は炭素数が40~70のイソプレンポリオール同族体のポリイソプレンポリオール化合物(新規物質)だと言われています。また、苦味を増加させるアミノ酸としては、甘味系のアミノ酸であるメチオニンが原因とされています。それゆえ、メチオニン含有量の多い栄養源を使用することで苦味が増加する傾向にあります。
  しかし、昔の品種と異なり、現在栽培されているほとんどの品種は苦味のないように品種改良されておりますので、使用する栄養源の違いによって苦味を増すことはありません。美味しいブナシメジを栽培するためには、栄養源の種類よりも品種を選抜することの方が大事だと言えます。

Q8.収量が伸びない原因は何ですか?

A.ブナシメジは一般的に増収材を使用します。各メーカーが販売している増収材を使用すると、1瓶当たりの収量が200g(850cc)以上となります。それでも収量が伸びない場合は、培養日数の延長や栄養源の見直しを行った方が良いと思われます。
 一般的にきのこの栄養源は、フスマやとうもろこしヌカなどの糖質の多いものを使用した場合には、芽数が多くなって増収傾向にありますが、肉質が軟化してしまいます。逆に米ヌカやオカラなどのタンパク質の多い栄養源を添加した場合には、芽数が減少する代わりにきのこの肉質が堅くなって品質が向上する傾向にあります。高品質なきのこで増収を図るためには、糖質とタンパク質との栄養源の組み合せが重要なのです。
 また、殺菌不良による熟度不足(害菌との競合培養)や培養中期の高温・酸欠などによる熟成障害が生じた場合にも収量が伸びなくなることから、栽培マニュアルに則った適正な栽培管理を心掛けることが大切です。詳しい栽培管理の方法については、弊社ホームページを参照してください。

Q9.収穫時に株が割れるのですが、何が原因ですか?

A.芽数が少ないと石突き部の形成が悪く、収穫後株割れし易くなります。芽数が少なくなる原因としては、芽出し時の乾燥や培養不足などが考えられます。また、ジャミ芽の発生が酷い場合にも株割れが起きることがありますので、1)の回答を参考にジャミ芽が発生しないように気を付ける必要があります。また、ブナシメジは接種した種菌部からきのこを発生させる栽培方法であることから、培養中に種菌部が乾燥してしまった場合(種菌硬化症)などにも同様の症状となる場合もありますので、特に培養日数の長い品種の場合などには種菌部の乾燥を防止するため、培養後半の湿度を適正値(65~75%)に保つことが重要となります。

Q10.適正熟成期間の判断目安はありますか?

A.発生操作を行う前の段階でブナシメジの菌床の熟成度合を判断することは非常に難しいことですが、培地pHが一つの判断基準となります。ブナシメジの場合、接種後5日前後から徐々にpHが上がり始め、菌糸が蔓延する前にピークを迎えます。ピークとなった以降は、次第に下がり始めて、ほぼ一定のpH値に収束する傾向が見られます。具体的には、殺菌後の初発pHが5.8とするとピーク時には6.5~6.7まで上昇し、接種から60日程度でpH5.5前後に落ち着きます(品種により異なる場合あり)。
  このように、培地のpHを経時的に測定することで発生操作の判断時期をある程度見極めることができます。また、菌床の呼吸熱に着眼して、室温と菌床温度との較差がほぼなくなる時期を目安とする判断方法もありますが、いずれの方法においても正確に菌床の熟成度合を判断することはできません。
  そこで、ブナシメジにおける最も簡便で確実な判断方法は、キャップを開封した際の子実体発生の有無で発生操作の適期を判断することです。キャップを外した際に菌床面から若干のきのこが発生していた場合には、発生操作を行っても良いとの判断目安になります。
  なお、培地配合内容や培養管理などによって菌床の熟度状態は変化しますので、より正確に発生操作の適期を判断するためには、1~2コンテナを5~10日間隔で3水準程度に分けて試験的に発生操作を行い、収穫日数や収量、芽数、芽揃いなどを考慮し、品種の適正培養日数を決定することが最も無難な判断方法だと思われます。

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