株式会社キノックス

あらげきくらげの栽培相談コーナー

あらげきくらげの栽培について、今までお問い合わせの多かった質問について解説いたしました。栽培するための参考にして下さい。

Q1. きくらげとあらげきくらげの見分け方を教えてください。

A. 「あらげきくらげ」は子実体の形が耳型や花びら状で、外観上は「きくらげ」と同様な形をしていますが、「きくらげ」よりもゼラチン質の肉質が厚いために透明感がなく、大型でボリュームがあって、傘の周縁部が大きく波打つことが特徴です。最も大きな違いは、背面(非子実層)の白色の直立した繊毛の長さが長く、子実層が二重(きくらげは一重)であるため、指で摘んで軽く揉むだけで2層に分かれることで容易に区別がつきます。食味的には大差がありませんので(あらげきくらげの方が食感良好)、人工栽培用のきのことしては、「きくらげ」よりも発生の温度幅が広く、肉厚でボリューム感があって収量性も高い「あらげきくらげ」の方が適しており、高温栽培用の新しいきのことして注目されています。

Q2.スリット栽培とはどのような栽培方法ですか?

A.「あらげきくらげ」の発生は、一般的に培養菌床の袋の上から×状の短い切れ込みを入れて複数の部位から生長させる方法が中国などで採用されています。しかし、このような発生方法では発生箇所が狭いことから、所定の収量を確保するためには長期間を要することが欠点です。きくらげ類の発生適温は25℃前後と高いため、長期にわたる収穫管理では害菌や害虫が発生してしまい、連作障害を誘発することが大きな問題となっています。この課題を解決するために弊社が独自に考案したのが「スリット栽培」です。具体的には、菌床面にこれまでの断続した×状の切れ込みに代わり、連続した縦、横、あるいは斜めの細長い切れ込み(スリット)を入れ、発生面積を多くしてできるだけ短期間に集中して高収量を上げられるように改善した「あらげきくらげ」の新しい栽培方法のことです。スリット栽培を取り入れて、1回の発生できのこを採り切るようにすることで、病害発生などの連作障害が解消されるようになるため、農薬を使用しない安全な「あらげきくらげ」の栽培が可能となります。

Q3.接種した種菌がなかなか活着しないで乾いてしまうのですが?

A.あらげきくらげは他のきのこに比べ発菌・活着が非常に遅いことから、種菌は細かく砕き過ぎないようにして塊状で接種し、接種量も多め(30~40mℓ)にします。特に、冬期間の接種や種菌を冷蔵保管した場合には、使用開始2~3日前に20℃前後の環境下で種菌の温度を高めてから使用するようにします。また、接種終了後の口封じは種菌の乾燥を防止する目的で、袋内の空気を押し出して菌床表面に袋を密着させるように封じることで、種菌の乾燥を防止します。

Q4.培養中の害菌混入率が高いのですが?

A.あらげきくらげは高温性のきのこであるため、接種後の保温管理が不適切な場合には、害菌が混入し易く、特に培養初期における害菌混入が問題となります。接種後はシーラーなどを使用してしっかりと袋の口封じを行い、移動の際には、菌床底部に手を添えて持ち上げ、決して袋口部を持ち上げて移動しないように注意する必要があります。また、ブロック菌床の場合は袋口部の幅が広いことから、放冷中の戻り空気による吸い込み汚染により接種作業前の段階において害菌を侵入させないように注意が必要です。

Q5.発生操作の注意点について教えてください

A.あらげきくらげは間隙から発生する特性があることから、発生操作は菌床側面に袋の上からカッターを使用して縦あるいは斜めの連続した細長い切れ込み(スリット)を入れることで行います。
スリットは、2~3mmの深さでしっかりと菌床に傷を付けるようにします。
深すぎる切れ込みは発生遅れや害菌発生の原因となるため、注意してください。
また、作業は菌床から袋を剥離させないよう丁寧に行います。
切れ込み本数については、多過ぎる場合には発芽過多となってきのこの生育に時間を要し、発生きのこも貧弱となってしまいます。
ブロック菌床の場合は、各面に3~4本のスリットが目安です。

Q6.芽が腐ってしまうのですが?

A.あらげきくらげは原基が一斉に揃って発生することから、常時芽が湿った状態を保った場合には芽腐れ等の病害を生じるようになります。特に外気温の高い時期には、芽切りを確認した後は乾/湿の湿度較差を大きく付けるように管理し、常に高い湿度環境とならないように注意します。また、発生中の散水管理においては、スリット部分に水を溜めないように注意する必要があります。

Q7.収穫方法について教えてください

A.きのこが丸みを帯びた茶碗型から縁が扁平となる皿型へ十分に生長(6~8cm)した頃に、ハサミ等を使用して個別に収穫します。株ごと1回で収穫することも可能ですが、次回の収穫までの期間が長くなるため、大きく生長したきのこから順次採取するようにします。収穫に使用するハサミは切口からの変色を回避するため、必ずステンレス製のものを使用します。また、鉄製の棚ときのこが接触すると黒変化して商品価値が低下してしまいますので注意してください。

Q8.虫の発生が多いのですが?

A.生育温度が高いために虫が発生し易いことが課題のきのこです。
対策としては、収穫が終了した菌床のスリット部に付着している基部(石突き)を完全に取り除き、キノコバエ等の害虫の産卵場所を無くすように管理します。また、収穫後の床は毎日水洗い等できれいに掃除するように心がけてください。
周年栽培の場合には、累積汚染による連作障害を回避する目的で、長期にわたる収穫は避け、1~2回で採り切るような短期集中型の収穫を心がけて年間の回転数を高めるように管理します。

Q9.収穫後のきのこの表面が白いカビのように見えるのですが?

A.きくらげ類のきのこは、内面(子実層)に胞子が堆積する特徴があることから、収穫後は必ず水洗いを行い、胞子を洗い流す必要があります。水洗いせずに出荷した場合には、きのこが乾燥するにつれて胞子が白く目立つ(場合によってはカビ様に発菌する)ようになり、クレームの対象となってしまいますので注意してください。

Q10.きのこの根元が緑色に着色するのですが?

A.ハウス管理で栽培を行う際には、明る過ぎる環境下で散水が多い場合、きのこの基部に「藻(ヤナギゴケ)」が発生して緑色に着色することがあります。
特に、地下水を使用して栽培した場合に多くなるため、水質に注意する必要があります。
また、ハウス内の照度調節(500Lx以下)を行い、明る過ぎ ないように注意し、加湿過多で常に高い湿度環境とならないように散水方法の見直しを行うことも必要です。

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