きのこの雑学・しいたけの雑学 調理について 「しいたけ」は日本で最初に人工栽培が行われるようになった食用きのこで、日本人に好まれる核酸系の旨味成分(グアニル酸)の含有量が多いことから、古来より広く好まれ、最も普及した栽培きのこです。学名にも日本の「江戸」に因んだ名前が採用されており、商業生産規模の生産額では人工栽培きのこ類の中でトップの座を占めています。 菌傘の大きさは4~10cm、時に20cm以上になることもあり、傘色は茶褐色~黒褐色で、傘肉は緻密で歯切れが良く、乾燥すると独特の香気(レンチオニン)を発するようになります。日本を代表する食用きのこのひとつであり、榾木(原木を使用した栽培)や菌床(オガコを使用した栽培)による人工栽培が盛んに行われています。原木栽培に比べ菌床栽培で生産された「しいたけ」は、香りや歯応えがなく、食味的には劣るのですが、軽労働での栽培が可能であることや消費者の嗜好の変化から、近年は全消費量の約90%が菌床栽培の「しいたけ」で占められるようになっています。 コレステロール低下作用(エリタデニン)や抗腫瘍作用(レンチナン)などの種々の薬効成分を有することが知られています。 このような種々の機能性を有する「しいたけ」の効用を引き出すための調理のコツは、使用する前にヒダを上にして直射日光下に30分間程度曝すことです。直射日光に含まれる紫外線の効果で、カルシウムの吸収を促進するビタミンDの含有量を100倍近くに増加させることができます。カルシウムとともにビタミンDを摂取することで、より効率的にカルシウムを体内に取り入れることができるようになることから、骨粗しょう症の予防に効果を発揮するようになりますので、 調理の際には是非実施したいものです。以下に、「しいたけ」を美味しく調理するためのポイントを紹介します。 「しいたけ」を美味しく食べるための調理のポイント きのこの旨味のもとは、グアニル酸と言われています。昆布のグルタミン酸や鰹節のイノシン酸と並んで、旨味の三大要素と言われる成分です。これらの旨味成分は、互いの相乗効果で、より一層の旨味を醸し出すことが知られています。因みに「旨味」は、昭和60年にこれまでの4原味(甘味、塩味、苦味、酸味)に加えて、日本で発見された「第5原味」の味の成分です。旨味成分のひとつであるグアニル酸は、もともと含まれている成分ではなく、きのこの構成成分である 「核酸」 から酵素の働きで作り出されるものです。そのため、如何に効率的にグアニル酸を醸し出すかは、調理の方法によって異なるのです。以下に、そのポイントを紹介します。①乾しいたけの水戻し方法乾しいたけは、水戻しの温度と時間で旨さに違いの出ることが知られています。すなわち、5℃で、5時間(こうしん:肉薄の傘の開いた「しいたけ」の場合)の時間をかけてゆっくりと水戻しを行うことです。低温で時間をかけて戻した「しいたけ」は、調理後に旨味のもとであるグアニル酸が最も多くなることが報告されています。しかし、時間のない人のための「ウラ技」の水戻し法もあります。それは、「乾しいたけ」を細かく砕いて、70℃前後のお湯で戻すことです。お湯で戻すことにより5分程度で完了します。ポイントは、お湯の温度で、60~70℃のお湯を使用することです。酵素の働きによって、グアニル酸が効率的に生成されるようになります。②生しいたけの加熱方法「生しいたけ」の調理においては、加熱方法で旨味が異なることが報告されています。前述した通り、きのこの旨味は酵素の働きで作り出されますので、調理の際の加熱温度が重要となります。酵素を上手く働かせるためには、70℃前後の温度帯ができるだけ長くなるような調理方法を心掛けることです。そのためには、水から加熱することが重要で、沸騰水への投げ入れは禁物です。③生しいたけの凍結保存「生しいたけ」をそのまま調理する場合には、水から加熱することが基本ですが、さらに旨味を増す方法があります。それは、調理の前に「しいたけ」を包丁の峰で叩いて細胞を壊しておくことです。細胞を破壊することで、「しいたけ」の中の旨味を醸し出すための酵素が働き易くなります。より細胞を均一に破壊するための方法としては、一度凍結後、解凍してから使用する方法もあります。凍結後の細胞が解凍する際に、内部細胞が均一に破壊されるのです。解凍せずにそのまま調理も可能ですが、その際には調理の温度に注意してください。ポイントは、70℃前後の温度帯で加熱するように心がけることです。なお、水戻しした「乾しいたけ」は、冷凍庫での保存が可能です。水戻しには時間がかかることから、まとめて戻したものを薄切りにして戻し汁ごと保存袋に小分けして入れ、冷凍庫で保存します。解凍するだけで使用できるため、いつでも簡単に「乾しいたけ」を料理に利用することができます。しいたけ調理の際の注意点として、ごく希に生焼け状態の「しいたけ」を食べてアレルギーを起こすことが報告されています。体質にもよるのですが、美味しく健康的に「しいたけ」を食べるためには、中火(60~70℃)でしっかりと火を通すように注意してください。 ◆ きのこの雑学 目次ページへ戻る ◆
調理について
「しいたけ」は日本で最初に人工栽培が行われるようになった食用きのこで、日本人に好まれる核酸系の旨味成分(グアニル酸)の含有量が多いことから、古来より広く好まれ、最も普及した栽培きのこです。学名にも日本の「江戸」に因んだ名前が採用されており、商業生産規模の生産額では人工栽培きのこ類の中でトップの座を占めています。
菌傘の大きさは4~10cm、時に20cm以上になることもあり、傘色は茶褐色~黒褐色で、傘肉は緻密で歯切れが良く、乾燥すると独特の香気(レンチオニン)を発するようになります。日本を代表する食用きのこのひとつであり、榾木(原木を使用した栽培)や菌床(オガコを使用した栽培)による人工栽培が盛んに行われています。原木栽培に比べ菌床栽培で生産された「しいたけ」は、香りや歯応えがなく、食味的には劣るのですが、軽労働での栽培が可能であることや消費者の嗜好の変化から、近年は全消費量の約90%が菌床栽培の「しいたけ」で占められるようになっています。 コレステロール低下作用(エリタデニン)や抗腫瘍作用(レンチナン)などの種々の薬効成分を有することが知られています。
このような種々の機能性を有する「しいたけ」の効用を引き出すための調理のコツは、使用する前にヒダを上にして直射日光下に30分間程度曝すことです。直射日光に含まれる紫外線の効果で、カルシウムの吸収を促進するビタミンDの含有量を100倍近くに増加させることができます。カルシウムとともにビタミンDを摂取することで、より効率的にカルシウムを体内に取り入れることができるようになることから、骨粗しょう症の予防に効果を発揮するようになりますので、 調理の際には是非実施したいものです。以下に、「しいたけ」を美味しく調理するためのポイントを紹介します。
「しいたけ」を美味しく食べるための調理のポイント
きのこの旨味のもとは、グアニル酸と言われています。昆布のグルタミン酸や鰹節のイノシン酸と並んで、旨味の三大要素と言われる成分です。これらの旨味成分は、互いの相乗効果で、より一層の旨味を醸し出すことが知られています。因みに「旨味」は、昭和60年にこれまでの4原味(甘味、塩味、苦味、酸味)に加えて、日本で発見された「第5原味」の味の成分です。旨味成分のひとつであるグアニル酸は、もともと含まれている成分ではなく、きのこの構成成分である 「核酸」 から酵素の働きで作り出されるものです。そのため、如何に効率的にグアニル酸を醸し出すかは、調理の方法によって異なるのです。以下に、そのポイントを紹介します。
①乾しいたけの水戻し方法
乾しいたけは、水戻しの温度と時間で旨さに違いの出ることが知られています。すなわち、5℃で、5時間(こうしん:肉薄の傘の開いた「しいたけ」の場合)の時間をかけてゆっくりと水戻しを行うことです。低温で時間をかけて戻した「しいたけ」は、調理後に旨味のもとであるグアニル酸が最も多くなることが報告されています。
しかし、時間のない人のための「ウラ技」の水戻し法もあります。それは、「乾しいたけ」を細かく砕いて、70℃前後のお湯で戻すことです。お湯で戻すことにより5分程度で完了します。ポイントは、お湯の温度で、60~70℃のお湯を使用することです。酵素の働きによって、グアニル酸が効率的に生成されるようになります。
②生しいたけの加熱方法
「生しいたけ」の調理においては、加熱方法で旨味が異なることが報告されています。前述した通り、きのこの旨味は酵素の働きで作り出されますので、調理の際の加熱温度が重要となります。酵素を上手く働かせるためには、70℃前後の温度帯ができるだけ長くなるような調理方法を心掛けることです。そのためには、水から加熱することが重要で、沸騰水への投げ入れは禁物です。
③生しいたけの凍結保存
「生しいたけ」をそのまま調理する場合には、水から加熱することが基本ですが、さらに旨味を増す方法があります。それは、調理の前に「しいたけ」を包丁の峰で叩いて細胞を壊しておくことです。細胞を破壊することで、「しいたけ」の中の旨味を醸し出すための酵素が働き易くなります。より細胞を均一に破壊するための方法としては、一度凍結後、解凍してから使用する方法もあります。凍結後の細胞が解凍する際に、内部細胞が均一に破壊されるのです。解凍せずにそのまま調理も可能ですが、その際には調理の温度に注意してください。ポイントは、70℃前後の温度帯で加熱するように心がけることです。
なお、水戻しした「乾しいたけ」は、冷凍庫での保存が可能です。水戻しには時間がかかることから、まとめて戻したものを薄切りにして戻し汁ごと保存袋に小分けして入れ、冷凍庫で保存します。解凍するだけで使用できるため、いつでも簡単に「乾しいたけ」を料理に利用することができます。
しいたけ調理の際の注意点として、ごく希に生焼け状態の「しいたけ」を食べてアレルギーを起こすことが報告されています。体質にもよるのですが、美味しく健康的に「しいたけ」を食べるためには、中火(60~70℃)でしっかりと火を通すように注意してください。