きのこの雑学・きのこ驚きの秘密
きのこの名前の命名ルール

 きのこの「種」の名前(種名)には、それぞれの国の言葉で表わされる普通名の他に、世界共通の学術的名称としての学名があります。日本では和名(標準和名)がこの普通名に当り、生物の名称として学術的に用いられる場合には一般的にカタカナで記述されます。日本語の和名はラテン語の学名と異なり、命名の意図がわかり易く、名前が途中で変わることも少ないので、覚える側にとっては大変便利な名前です。しかし、和名には地方によっていろいろな呼び名(地方名)があって、時として混乱のもととなることもあります。地方名の多い食用のきのことしてはナラタケとアミタケが有名で、「きのこの語源・方言辞典」によれば、ナラタケでは「おりみき」、「さもだし」、「ぼりぼり」など177通り、アミタケについては「あみこ」、「あわもたし」、「じこぼう」など107通りの地方名があると言われています。このような不都合を無くす目的で、きのこの和名の付け方について日本菌学会では2008年に学会推奨和名の決定についての手順が決定されました。この手順の中で、新和名制定の体制と方法についてのガイドラインが完成し、学会の中の委員会が審議して標準和名を決定することになったのです。すなわち、新種のきのこの名前は、発見者が仮称で報告したものを最終的に学会内の標準和名委員会で承認されることで、初めて正式和名として決定されるのです。過去に付けられた名前についても当委員会で決定・変更することができますが、実際は勝本譲「日本産菌類集覧」で採択された和名が学会推奨和名となっているようです。

 和名とは対照的に、学名は研究結果により名前が変更されることは頻繁に起きており、「しいたけ」はその代表的な例として有名です。現在の「しいたけ」の学名は、Lentinula edodes (Berk. ) Pegler ですが、つい最近まで Lentinus edodes (Ber.) Singer と呼ばれていました。さらに前は Cortinellus shiitake (J.Schrot.) Henn であり、さらにその前にも多くの学名が「しいたけ」に付けられていたのです。つまり、学名においては常に最初に命名された名前が優先されるのです。同じ種であるにもかかわらず、昔と今で学名が異なることは、学問的には妥当なことであっても、混乱したり困ったりする人が多いのではないかと思われます。

 学名とは生物に付けられた世界共通の学術上の名前であり、ラテン語あるいは他の言葉をラテン語化した2つの言葉の組み合わせで出来ています。先の語は「属名」を、後の語は種独自の名称である「種小名」を表しています。「属」と言うのは、種の上位に位置する生物分類上の階級で、すべての種は何らかの属に所属することになるのです。つまり、学名を見ることで、属名からその所属が分かり、きのこ同士の類縁関係が解明出来るようになっているのです。また、学名には名前を付けるまでに至った採集者や研究者の所属や種についての考え方や様々なドラマが記録されており、分類学上においては極めて重要な意味を持っているのです。きのこの学名は「国際藻類・菌類・植物命名規約」に従い、その名付け方が決められています。「分類学の父」と言われるスウェーデンのリンネが創始した二名法が基礎となっており、二名法には以下のような重要な規則があります。

国際藻類・菌類・植物命名規約
(メルボルン規約;2012年)

日本植物誌(ツュンベリー著;1784年)

植物の種(リンネ著;1753年)


①種の特徴がラテン語で記載されている

②種の学名は、「属名+種小名」の二名法で表される

③一つの種に対し、有効な学名は一つだけ

④同じ種に二つ以上の学名がある場合は、先に付けられた学名が優先する

⑤学名の適用は、基準標本または図解などが命名法上の「タイプ」であり、保管先が明記されている

 この二名法の命名規約により最初に命名されたきのこは、1753年のリンネ著「植物の種」に登場する学名が最古とされており、きのこは24番目の隠花植物網の菌類(Fungi)に入れられ、筆頭は「Agaricus chantharellus L.(和名:アンズタケ)」です。「Agaricus」 は属名、「chantharellus」 は種小名、「L.」は命名者名で、命名者名は略して表記されることが多く、リンネンは最も偉い学者なので一文字の「L.」で表わされるのです。しかし、きのことカビなどの菌類の分類学を大成させたのは、オランダの菌学者ペルスーン(学名の略記載:Pers.)とスウェーデンの菌学者フリース(略記載:Fr.)であるため、同じきのこがリンネとペルスーン、フリースで違う名前が付けられている場合、サビキン目とクロボキン目、腹菌類はペルスーンの付けた学名が、その他の菌類はフリースの付けた学名が認可されると言う特別に例外的な扱いがなされています。そのため、最も古い学名は、リンネの命名した「Agaricus chantharellus L.」ではなく、後にフリースが命名した「Cantharellua cibarius Fr.」が有効学名と言うことになるのです。

 日本での最初のきのこの学名は、スウェーデンの植物学者ツュンベリーが江戸時代に長崎のオランダ商館の医官として滞在中に採集・調査した植物を1784年にまとめた著書「日本植物誌」に新種として発表された「Boletus dimidiatus Thumb.(和名:マンネンタケ)」だと言われています。属名の「Boletus」は近年、傘の裏に多数の穴がある柔らかいきのこ(イグチの仲間)を指していますが、18世紀においてはマンネンタケのような硬いサルノコシカケの仲間もBoletus と呼んでいたようです。現在、マンネンタケの学名は「Ganoderma lucidum (Curtis) P. Karst.」となっていますが、英国のカーティスが1781年に 「ロンドン植物誌」でツュンベリーより3年早く「Boletus lucidum Curtis」を発表しているために lucidum が優先され、その後フィンランドの菌学者ピータ・アドルフ・カーステン(略記載:P.Karst.)が新属のGanoderma(マンネンタケ属)を作ったことで、マンネンタケの学名は「Ganoderma」+「lucidum」と言う新しい組み合わせになったのです。このように学名は、和名と異なり命名の史的研究が進むにつれて頻繁に変更されるのです。

 

参考文献 : きのこミュージアム(2014年)

著者:根田仁、発行所:八坂書房



 



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