株式会社キノックス

きのこの雑学・はたけしめじの雑学

生産流通について

「はたけしめじ」は身近な環境で発生する美味しいきのこなのですが、栽培が難しいことから、これまで市場に流通することはありませんでした。平成4年頃から、本格的な人工栽培化に向けた研究が民間企業などで行われるようになって、平成10年頃からようやく政府の統計資料にも記載されるようになり、少しずつではありますが生産量が伸びるようになってきています。そのような生産環境の中、平成15年には京都府に大規模生産施設が建設されたことにより、平成16年から生産量は一気に増大して1,000t台で推移するようになりました。

 しかし、平成20年の2,940tをピークに、生産量が伸び悩んでいるのです。伸び悩みの最大の原因は、菌株性能が他のきのこに比べて非常に不安定であることが影響しているのです。きのこの種菌は、野菜や花の種のような安定性に欠けることはこれまでも述べてきたことですが、「はたけしめじ」は菌根菌と腐生菌の中間型であるため、菌株の性能維持はこれまでの人工栽培きのこの中でも取り分け困難なのです。工場化に向けた栽培技術が開発されても、性能が安定しないためになかなか安定した生産を継続することが難しいのです。これから流通量を伸ばしていくためには、性能の安定した種菌や菌株の保存技術の開発が必須だと言えます。今後の消費拡大が期待される有望きのこであり、最近の研究では食べても吸収可能な制ガン効果を発揮する低分子のβ-グルカンが多く含まれることなどが解明され、まさに「医食同源」を地でいく将来有望なきのこですので、今後の生産の伸びを期待したいものです。

(表1)はたけしめじ生産量の年次別推移(単位:t)

平成9 10 11 12 13 14 15
19.3 8.7 96.7 179.1 219.6 171.1 266.4

 

16 17 18 19 20 21 22 23 24
1,182.0 905.1 1,022.8 1,564.5 2,940.6 1,791.7 1,617.4 1,578.8 1,751.0